2017年3月26日

牧神とフィルム

Pan on the medal

こんなメダルを手に入れた。

表面には「賞 MINORI FILM」、裏面には「株式会社六和」とある。
かつて「みのりフィルム」という写真用フィルムの銘柄があり、「六和」というのがそのメーカーだったようだ。おおむねメーカー主催の写真コンテストか、小売店表彰のメダルといったところだろう。

質感や彫りの浅さは昭和30〜40年代の量産品メダルという印象だが、目を惹くのは表面に描かれた図像だ。笛を吹く半人半獣の像、これはギリシア神話のパンの姿だ。パンは牧神とも呼ばれ、豊穣さを象徴し、笛を吹くことを好み、なおかつ絶倫ということ。


なぜフィルム会社のメダルにパンが描かれているのか?
その答えはおそらく、みのりフィルムのラインナップに「みのりパンS」「みのりパンSS」というのがあったからだ。

しかしそのパンは「パンクロマティック」のパンだ。これは「可視光線すべてに感光する」という意味で、世界中の白黒写真フィルムに何々パンと名前がついている。つまりパンアメリカンとか汎ヨーロッパとかいうときのパンであり牧神とは関係がないのだ。


と思いきや…wikipediaのパンの解説にこうも書いてあった(以下一部引用)。

「パーンがテューポーンに襲われた際に上半身が山羊、下半身が魚の姿になって逃げたエピソードは有名であるが、この姿は低きは海底から高きは山の頂上まで(山羊は高山動物であるため)世界のあらゆるところに到達できるとされ、「全て」を意味する接頭語 Pan(汎)の語源となったともいわれている。」

という民間語源説があるのだと。

以上のような経緯で牧神とフィルムがつながっている。



参考文献
https://ja.wikipedia.org/wiki/ボルタフィルム
wikipedia日本語版「ボルタフィルム」2017年3月26日閲覧

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_photographic_films
wikipedia英語版「List of photographic films」2017年3月26日閲覧

https://ja.wikipedia.org/wiki/パーン_(ギリシア神話)
wikipedia日本語版「パーン(ギリシア神話)」2017年3月26日閲覧