2016年12月11日

佐世保の土蔵


Dozo (earthen storehouses) in Sasebo, Nagasaki

11月に佐世保を訪れた。

佐世保の市街地は海に沿って平たく延びている。これは狭い浦辺を埋め立てたものだ。街の後ろには常に崖がはだかり、また街の中にはかつての島が取り残されている。その間を縫ってアーケードが設けられているのだが、これは町7つ分の長さを誇るものである。街の後ろには起伏にそって無数の住宅が建つ。岩を削り石垣を積みコンクリで固める。立体的な路地と階段がはりめぐっている。上り詰めると港が手に取るように見える。

港はかつての軍港、いまは自衛隊と米軍の港だが、離島とを結ぶ旅客船も多く発着する。私はその日漫画家クリハラタカシ氏の取材に同行し池島の炭鉱を訪ねたのち、水路にて佐世保へ入ったのだ(クリハラ氏のレポートはデイリーポータルZに掲載されている)


魅力満点の佐世保であったが土蔵はちっとも見つからなかった。土蔵が盛んでない土地柄なのかもしれない。そもそも九州一帯に、漆喰で塗り籠めた町家はよくあるのだが、主屋とは別に建てられた土蔵というのをあまり見受けない感じもする。

私は土蔵を求めて街道を歩いた。佐世保より東に3駅の早岐はいきというところでやっと会心の土蔵を発見した(上図)。早岐は佐世保市内ではあるが瀬戸沿いの静かな港町で、目の前には針尾はりお島が迫っている。鉤の手のある目抜き通りに古い町家が並び、その裏手の運河のような川に面してこれが建っていた。

このたたずまいをご覧頂きたい。鉢巻は薄く、窓には鉄扉がはまり、また窓の庇に瓦が差し掛けてあるあたりは熊本や鳥栖と共通する造り方だ。鉄扉の蝶番のかたちに窓枠が切り欠かれているのがよい。装飾の少ないぶん量感がまさり、壁は風雨により下から灰味がかる。九州の土蔵によく見られる風合いだ。
好ましく堅牢な印象。瓦は新しく軽いが、昔はもっと重厚なのが葺かれていたに違いない。


《写真コーナー》

九十九島くじゅうくしまの階段

この立体感

夜の自衛艦

佐世保の古いマンホールのふた

1枚だけ見つけた右書きの防火栓(消火栓)のふた